西浦四季さん「私の誇りはあなたたち」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

西浦四季さん「私の誇りはあなたたち」

『自分を大切に、周りの人を大切に。そうすれば、あなたの周りは笑顔で溢れてる。』
 

「将来、妊娠は難しいかもしれない」
そう言われた中学3年の夏。
思春期の摂食障害の診断を受け、病院通いの日々が続いていた。
仕事人間だった母は、私の通院に時間をさき、栄養たっぷりのメニューを毎日考えてくれた。医師からこの言葉を言われた時は、そんな母に、申し訳ないなという思いでいっぱいだった。
「妊娠」という言葉にまだピンとこなかったけれど、母の悲しそうな顔が今でも脳裏に焼き付いている。
そしてあの時私は「頑張らない」を頑張ることにしたんだ。部活も勉強もほどほどに、幸せななことに私の周りには温かい家族や優しい友人がいたから、その人たちとの時間を楽しむことにした。すると不思議と体調が改善していったのだった。

そして、それから何年も過ぎ、お腹に宿った命。
妊娠を知った時、自分の中から愛が溢れてくるのを感じた。
水に入れたドライアイスのように、もこもこと溢れてきて身体中が愛で満たされた。
「奇跡だ」そう思った。そして、「命をかけてこの子を守る」って、心に誓った。まだ生まれてもないのに、こんなことを考えるなんて不思議だな、なんて思いながら、1日1日をかみしめながら過ごしていた。
幸せなことばかりじゃなかったよ。酷い悪阻、目で赤ちゃんの無事を確認することのできない不安。押し潰されそうになりながら、それでもあなたが生まれてくる希望が大きくて、私は前を向いて歩いてた。

まさかこんな思いが4回もできるなんて、この頃は思ってもいなかった。
妊娠に慣れることなんて全くできなくて、毎回悩み涙して、不安な夜を過ごした。でも、あなたのことを考えて、ああでもないこうでもないと思えるって、とてつもなく幸せなことなんだってお腹に手を当てて感謝をしたんだよ。
出産も本当に一人一人違った。
でも私が毎回心がけていたことは「1人じゃない。赤ちゃんと一緒に出産を楽しもう」ということ。痛くて痛くて、楽しむってなに?って感じだけれど、でもそう思うと、恐怖より楽しみがまさったのだった。

どの出産も忘れることができないけれど、特に印象的だったのは次男の時だった。
ちょうど夜勤の人と交代の準備で、分娩室に残された私と夫。ものすごい陣痛の波が押し寄せる。モニターを見ながら、「くるよー、大きいのくるよー」と半ば楽しんでいる夫にツッコミをいれる余裕もない私。やっと助産師さんがきてくれた時には子宮口全開。「そりゃそーだ」冷静にこう思ったのを覚えている。
それから何度かいきみ、「出てくるよー!」そう言われ背中を持ち上げてくれた。
神々しい光に包まれた生命が生まれる瞬間だった。あまりにも美しすぎて、あの光景が忘れられない。出産の素晴らしさを改めて感じたのだった。

「あなたが4人の母になるなんて思ってもみなかったよ」
そう笑いながら母が言った。それは私が1番思っている。
昔のことを思い返すと、本当にこうやってこの子たちに出会えたことを誇りに思う。
そして、伝えたい。自分を大切にしてください。そしてあなたの周囲の人も大切にしてください。頑張りすぎないでください。人生を楽しんでいつも笑っていてください。
偉そうなことは何にも言えない母だけど、でも私自身、周囲の人の愛に包まれて今ここにいる。自分の命より大切だと思えるあなたたちちとも出会えた。
愛があれば幸せになれる!これは自信を持って言えるから。
あなたたちの未来が輝くものでありますように。

 

徳島県 西浦四季さん
題名:私の誇りはあなたたち
子どもへ伝えたい言葉:「自分を大切に、周りの人を大切に。そうすれば、あなたの周りは笑顔で溢れてる。」