UKIさん「来てくれてありがとう」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

UKIさん「来てくれてありがとう」

『私たちの所に来てくれて、ありがとう。あなたは、3年越しに私たちのもとに来てくれました。授かった時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。』
 

 あなたが生まれてくるまで3年間、不妊治療のために病院に通って、あなたが来てくれるのを待ち遠しく思っていました。赤ちゃんに来て欲しい、けど来てもらえない、希望と不安と落胆、いろんな感情が入り混じった3年間でした。でも、あなたは本当にベストなタイミングで私たちのもとに来てくれました。あなたのおばあちゃんが脳の疾患で大きな手術をして入院・リハビリをして、それがある程度落ち着いてから、あなたはお腹の中に来てくれました。今思うと、手術の手続きや入院にともなう着替えなど、私が色々と動いていたけど、その時仮に妊娠していたり、子どもがいれば自分の母親(あなたのおばあちゃん)のためだけに動くことはできなかったと思います。私たちのことを思って、3年間来ることを待ってくれていたんですよね。本当にありがとう。

 あなたを身ごもってはじめての妊娠生活は、当たり前ですが初めて経験することばかり。妊娠初期から骨盤の関節が痛くなって、急に立ち上がれなくなったり歩くのも痛かったり、痛い経験もしました。でもそれは、もしかしたら私が無理をすることをあなたが止めてくれていたのかもしれません。当時の職業は、体が資本で力がいることもあり、流産する人も少なからずいました。あなたは自分自身と私(母親)の体を守ってくれたのかな、と思います。あなたと一心同体で過ごす妊娠生活は、とっても神秘的なものでした。お腹の中に命がある喜びとあなたとつながっている何とも言えない感覚、毎回の検診であなたの顔を見ることが本当に楽しみでした。

 あなたが生まれた産院は、洋館のような階段には赤い絨毯が敷かれているようなきれいなレディースクリニックでした。当時、単身赴任だったこともあり、計画分娩で産みました。促進剤を打ってもなかなか生まれてこようとしないあなた、バルーンを入れてやっと陣痛が始まりました。はじめての陣痛はこんなに痛いものかと、ただただ静かに耐えていました。痛いーっと叫ぶことはなかったです(笑)痛みも結構強くなっている中、助産師さんが「夜の9時ごろまでには生まれるね」と言った時、そばにいたお父さんの腕時計で何時なのか確認するのを迷いました。でも、耐えかねて時間を確認してしまい、まだ3時間位あったことに、この痛みがまだ続くのかーっと絶望したのを覚えています(笑)あなたのお父さんと私とあなたの3人の共同作業で無事に生まれてきてくれたあなた。初産なのに、一回いきんだだけで出てきたあなた。この作文を書きながらも、涙が出てくるくらい、本当に待ち遠しく嬉しかったのを今でも覚えています。当時も生まれてきた時は、"やっと会えたね"と泣きました。ただ、はじめての出産で必死すぎて、生まれてきた瞬間にあなたの初声が聞こえないことに気づいていなかった母です(笑)

 あなたは生まれてすぐにヘモグロビン値が低く、大きな総合病院にかかり採血したり通院したり薬を飲んだりしました。生まれてきたばかりのあなたの小さな体に針を刺して、採血する度に泣いているあなたの声で、心が引きちぎられそうだったのを覚えています。でもあなたはその後、大きな病気をすることなく色んな人に可愛がってもらって、すくすく育ちました。

 あなたのお母さんである私が、今の仕事である産前産後ケアをしているのは、あなたが私の元に来てくれたおかげです。赤ちゃんの偉大さ、お母さんが笑顔であることの大切さを身をもって教えてくれたあなたに、心から感謝します。ありがとう。
そして、命を次の世代へ紡いでいって欲しいと思います。

 

高知県 UKIさん
題名:来てくれてありがとう
子どもへ伝えたい言葉:「私たちの所に来てくれて、ありがとう。あなたは、3年越しに私たちのもとに来てくれました。授かった時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。」