どんぐりママさん「3つの傷」 | 第1回ぐるっとママ懸賞作文

「私の出産」~母から子へ伝えたい言葉~

第1回ぐるっとママ懸賞作文

どんぐりママさん「3つの傷」

『話したことなかった傷の話』
 

3本の傷

 私には中学生と小学生の2人の子供がいる。お腹には3本の傷がある。帝王切開だったからだ。

 出会う人は自分の子供が産まれた時の出産体験を「陣痛が本当に痛くて」「子供が大きくて、力む時大変で裂けて」「安産で◯時間でうまれたの」と話をしてくれる。
そして、「あなたはどうだった?」と当然の流れになる。私はなんの躊躇もなく「私は2人とも帝王切開。今の医療のお陰で出産できたよ。ありがたいね。」と話す。
自然分娩と帝王切開、漢字で書くとこんなにも違うけれど、自然分娩はもちろん、予定帝王切開の出産も、緊急帝王切開の出産も立派なお産。
母子ともに安全に産まれる素晴らしい技術である。

 明るいライトがたくさんの手術室にはアンジェラ・アキのピアノと歌声が流れる。
先生2人はテンポよく話をしながら手術を進める。麻酔は聞いているがハサミでチョキチョキされる感覚、「ちょっと引っ張りますよー」の声のあと、子供を取り出す感覚、内臓ごと胎盤を引っ張り出す感覚、そして、子供の産声。
はじめて、助産師さんが顔の横に連れてきてくれて子供と会えたとき「あったかい。可愛い。産まれてくれてありがとう」と涙が止まらなかった。
ちなみに男の子の時は同級生だった助産師さんに「ちゃんとついてる?」と確認する余裕もあった。
 
 4つ上の彼氏とは高校卒業からずっと遠距離で、23歳の時に結婚の話になった。
私は転勤のある会社で正社員になったばかりで、5年ぶりに一人暮らしを終え、帰って来たばかりだった。地元に留まるため結婚という流れでもあったが、結婚が決まったとたんに地元から車で3時間のところに転勤が決まった。そこからは結婚の準備をしながら、慣れない業務をこなし怒涛の毎日だった。
そんな中、やっとの休みに友達と出かけ多際、下腹部に激痛が走り、動けなくなった。夜中救急外来へ友達に付き添われ行った。一通り検査をし、国立病院に紹介状を貰い、翌日産婦人科を受診した。

【拳大の子宮筋腫】それは【悪性疑い】だった。
若いので産婦人科の検診など受けたことがなかった。良性か悪性かは組織検査をしないとわからないという診断だった。
 すぐに手術が決まった。気づいていなかったが、貧血も起きており、癒着の可能性もあった。
彼には結婚は辞めようと話した。仮に手術が成功して良性の子宮筋腫だったとしても、手術の後、不妊になる可能性が高いと説明を受けたからだ。

 ずっと学生の時から生理が重く、恥ずかしがらずに産婦人科検診を受けていたら良かったと思う。ちなみに、子宮の手術をした場合、自然分娩は子宮破裂の可能性があるため必ず帝王切開での出産になる。
手術を受けるまでは、悪性かもしれない、子供ができない、自然分娩が出来ないかもしれない自分が悔しくて泣いた。
今の夫は言った。
「子供が出来なかったら養子でもいい。今は治すことを考えて。結婚はやめないよ。」
これが1本目のお腹の傷である。

私のお腹には3本の傷がある。

君達が今、姉弟喧嘩して、反抗期で、母は怒るけれど、しょっちゅう夫婦喧嘩してるお父さんお母さんは君達が大好きだ。
子供達、私たちのもとに産まれてきてくれてありがとう。

 

高知県 どんぐりママさん
題名:3つの傷
子どもへ伝えたい言葉:「話したことなかった傷の話」